【完全版】オフィスビルのBM管理会社の選び方と賢い活用ポイントガイド

皆さん、こんにちは。
株式会社スペースライブラリの飯野です。
この記事は「【完全版】オフィスビルのBM管理会社の選び方と賢い活用ポイントガイド」のタイトルで、2025年8月25日に執筆しています。
少しでも、皆様のお役に立てる記事にできればと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
はじめに
現代の働き方が多様化する中で、賃貸オフィスビルの運営スタイルにも大きな変革が求められています。かつては「とりあえず都心のオフィスへ出社」という形が一般的でしたが、在宅勤務の普及やシェアオフィスの拡大により、テナント企業が求めるオフィスの機能や環境は大きく変容しています。
こうした背景の中、ビルオーナーにとって欠かせないのは、BM(ビルマネジメント)業務を担う管理会社の存在です。オフィスビルという資産を運営するにあたって、BMの質はテナントの満足度や建物の資産価値を左右する非常に重要な要素となります。BMがカバーする業務範囲は、設備管理、清掃、セキュリティ、クレーム対応など多岐にわたり、これらを総合的かつ継続的に見守ることによって、安心してビルを利用できる環境が整えられるのです。
しかし、オーナー自らがこれらの手配や監督を行うとなると、膨大な時間と高度な専門知識が必要となり、その負担は非常に大きいのが現実です。また、オフィスビル特有の要望や規模感に応じた最適な運営方法を理解しておくことも不可欠です。そこで、BM業務をどの管理会社に委託し、どこまで外部に任せるべきかという判断は、非常に重要なポイントとなります。
実際、BMを専門とする管理会社は数多く存在し、それぞれのコスト構造、サービスの質、対応スピードなどに大きなばらつきがあります。適切な会社を選定し、しっかりと連携を図らなければ、テナントの満足度が低下し、ひいては建物の資産価値を損なうリスクも高まるでしょう。
本稿では、オフィスビルのBMに焦点をあて、管理会社選定のポイントや、日常的に発生する設備管理、清掃、セキュリティ対応といった業務の要点をバランスよく紹介していきます。ぜひ最後までお読みいただき、オーナーの皆様や物件管理に携わる方々の、実践的なビル運営の指針としてお役立ていただければ幸いです。
1. オフィスビルにおけるBMの重要性
1-1. テナント企業が安心して働ける環境づくり
オフィスビルは、言うまでもなくテナント企業の“職場”です。職場の快適性や安全性は、従業員の生産性・モチベーションに影響を与えます。たとえば、空調が適切に管理されていない環境では、社員の体調不良や業務効率の低下を招く可能性があるでしょう。防災・セキュリティが不十分ならば、情報漏洩リスクや事故・犯罪リスクが高まってしまいます。
BMの目的は、こうしたリスクを最小限に抑えつつ、テナントが安心してビジネスを展開できる環境を持続的につくることにあります。
1-2. 資産価値と競争力の維持・向上
オフィスビルには、空調設備やエレベーター、防災システムなどの高額なインフラが集約されています。これらを適切に保守管理することで建物の劣化を防ぎ、結果的にビルとしての資産価値や競争力を保ち続けられます。一方で、そうした管理を怠ると、突然の故障やクレームが頻発し、テナント離れを招くケースも少なくありません。
BM業務を担う管理会社との連携がスムーズであれば、計画的な点検やリニューアルの提案などを通じて、ビルの「寿命」を延ばしながらブランド力を高めることが可能になります。
2. BMがカバーする主な業務領域
BMは多岐にわたるため、全体像を把握しておくことが大切です。代表的な4つの領域を簡単に整理してみましょう。
2-1. 設備管理・保守点検
オフィスビルでは空調・エレベーター・給排水・電気・防災システムなど、多種多様な設備が日々稼働しています。これらの設備を定期的に点検・メンテナンスし、故障や事故を未然に防ぐのがBMの基本的な役割です。
- 空調は室内環境を左右するため、フィルター清掃や冷媒・ダクトの点検を欠かさず行う
- エレベーターの定期検査や部品交換は、利用者の安全確保に直結
- 防災設備(消防設備、避難経路表示など)の点検と訓練もBMの重要業務の一環
2-2. 清掃・衛生管理
オフィスビルの美観と衛生環境を支えるのが清掃・衛生管理です。共用部(エントランス、廊下、トイレなど)が常に清潔な状態に保たれていれば、来訪者やテナント企業の従業員に好印象を与えられます。
- 床材やカーペットなど、素材に合わせた適切な清掃方法を選ぶ
- トイレや給湯室などの水回りは、利用頻度が高く、汚れが目立ちやすいエリア
- 建物の劣化を早めるような汚れや水垢・カビを放置しないためにも、計画的なクリーニングが欠かせない
2-3. セキュリティ・防犯体制
オフィスビルには、情報漏洩リスクや備品盗難リスクなど、企業独自の課題が存在します。これらに対応するため、管理会社は、専門の警備会社とも連携しつつ、以下のような活動を行います。
- 入退館管理システム(ICカードや顔認証)による不正侵入の防止
- 監視カメラや赤外線センサーを配置して専門の警備会社とも連携して、夜間対応も含めたモニタリング
- 定期的な防犯設備の点検
2-4. トラブル・クレーム対応
オフィスビルで発生するトラブルは様々です。空調の突然停止、給排水の漏水、共用部での騒音問題など、いつ発生してもおかしくありません。BM担当者の役目は、これらのトラブルに迅速に対処し、ビジネスへの影響を最小限に抑えることです。
- エレベーターの停止 → 速やかなメーカー連絡・救出対応
- 漏水 → 原因箇所の特定と応急処置、修繕業者の手配
- テナント間クレーム → 当事者同士の調整・解決策の提案
トラブル対応が遅れると、テナント満足度の低下や被害拡大を招く可能性があるため、管理会社の“腕の見せ所”ともいえます。
3. 管理会社選定の基本ポイント
以上のようなBM業務をしっかりカバーしてくれる管理会社を見極めるために、最初に押さえるべき基本ポイントを紹介します。
3-1. オフィスビル特化の実績・ノウハウ
マンションや商業施設の管理とオフィスビルの管理では、必要となる知識やノウハウに大きな違いがあります。
- 空調負荷が高いオフィスビル特有の運用知識を持っているか
- 昼間稼働がメインであるオフィスビルならではの清掃スケジュールやトラブル対応を理解しているか
- ビジネス用途に適したセキュリティ対策の経験があるか
これらを踏まえた管理ができるかどうかは、管理会社を選定する際の最重要チェック項目です。
3-2. コスト構造とサービス範囲の透明性
BMにかかるコストは、清掃や設備点検の頻度・規模、常駐人員の有無、セキュリティレベルなどによって大きく変動します。
- 基本委託料に含まれる範囲はどこまでか
- 緊急対応や追加業務が発生した際の料金体系はどうなっているか
- 大規模修繕時の管理費やコーディネート費用が明確化されているか
不透明な項目があると、契約後に「聞いていなかった追加料金が請求された」というトラブルが発生しやすいので、事前の確認が重要です。
3-3. 担当者の専門性とコミュニケーション力
BMはテナントとの密なやり取りが求められるため、管理会社の担当者がどれだけ柔軟にコミュニケーションできるかが重要となります。
- 設備管理や清掃、セキュリティなど各領域に一定以上の知識があるか
- テナントのクレームに迅速かつ丁寧に対応できる体制があるか
- 担当者が変わる場合の引き継ぎルールやマニュアルが整備されているか
これらの要素は、安定した運営やテナント満足度の向上に直結します。
3-4. トラブル・緊急時対応
オフィスビルの利用時間帯は、平日の日中が中心となります。ただし、企業によっては夜間や休日に工事等の作業を行う場合もあるでしょう。24時間対応が必須かどうかは物件やテナント属性によって変わりますが、いざというときに誰が一次対応をし、どのような手順で修繕業者を手配するのか、明確なフローを用意している管理会社を選ぶことが大切です。
3-5. 最新技術やデジタルツールへの対応
近年では、IoTセンサーやビル管理システム(BMS)、クラウド型監視・報告ツールなど、デジタル技術を活用したBMが注目されています。こうしたシステムを活用することで、点検や修繕時期の可視化、遠隔監視による迅速なトラブル対応などが可能になります。管理会社がどの程度最新技術を取り入れているかも、将来的な運営効率やコスト削減に影響してくるでしょう。
4. 清掃業務:バランスよく注力するポイント
清掃はBMのなかでも非常に“目に見える”業務です。とはいえ、清掃だけを過度に重視すれば良いわけではありません。ビル全体の運用バランスを考えつつ、清潔かつ衛生的な空間を維持するためには以下のポイントを押さえると良いでしょう。
4-1. 清掃スケジュールの策定
オフィスビルでは人の出入りが多い時間帯に清掃を行うと、テナント企業の業務を妨げるケースがあります。逆に、夜間や早朝ばかりに清掃を集中させると、清掃スタッフの人件費が高くなったり、巡回回数が十分でなくなったりする懸念もあります。
- 日次清掃・週次清掃・定期清掃をそれぞれ計画し、テナントと調整
- 流動的に人が出入りするエリア(エントランスやエレベーターホール)と、執務エリアでは、適切なタイミング・頻度を変える
4-2. 水回り・共用部の清掃品質
トイレや給湯室などは利用頻度が高く、衛生状態がダイレクトに評価されるため、注意が必要です。
- 消耗品(ペーパータオルやトイレットペーパー)の補充管理
- 水垢やカビの予防のための定期的な専門清掃
- ニオイ対策や換気の改善など、快適性を維持する工夫
また、建材によっては汚れの蓄積や劣化の進行が異なるため、プロの清掃会社や管理会社と協力して最適な洗剤やクリーニング手法を選ぶことが大切です。
4-3. 清掃スタッフの管理と情報共有
清掃は人が行う業務ですから、最終的な品質はスタッフのスキルやモチベーション次第と言っても過言ではありません。
- 清掃手順や使用する洗剤などをマニュアル化して統一
- 定期的な研修やミーティングを通じてスキル向上を図る
- 清掃中に気づいた設備の不具合を管理会社の設備担当へ迅速に共有
こうした連携が、ビル全体のトラブル発見や維持管理にも役立ちます。
4-4. コストとクオリティのバランス
清掃の頻度を上げればクオリティは上がりますが、人件費や清掃費用も増大します。逆にコストを削減しすぎると、清掃不良やクレームが多発し、結果的にビルの評価低下につながるかもしれません。
- ビルの規模や利用状況に応じて、必要十分な清掃回数や時間を見極める
- 他業務(設備点検など)と連携し、スタッフが重複して巡回できるタイミングを調整
こうした調整によって、清掃コストとクオリティの最適点を探ることがポイントです。
5. 知っておきたい営繕(修繕業務)の最適化アプローチ
BMには日常点検や清掃のほか、故障・劣化にともなう修繕業務(営繕)が含まれます。営繕をどの程度外部委託するか、あるいは内製化するかは、オーナーや管理会社ごとに方針が異なります。以下では「すべて外部委託」と「一部内製化」の双方のメリット・デメリットを見てみましょう。
5-1. すべて外部委託する場合
メリット
- その都度、専門業者を選定できるため、工事内容に合わせて最適な会社を見つけやすい。
- 自社で営繕スタッフを抱えなくて済むため、人件費や設備投資費用を抑制できる。
- 大掛かりな改修や特殊工事にも、柔軟に対応できる。
デメリット
- 緊急トラブル発生時に見積もりや契約手続きを経るため、対応が遅れるリスクがある
- ビル固有の事情(構造・設備のクセなど)を外部業者が熟知していないケースがあり、適切な工法・費用をすり合わせるのに時間がかかる
- 施工内容や費用面のチェックが不十分だと、割高になったり、品質にムラが出たりする可能性がある
5-2. 一部内製化する場合
メリット
- 小規模な修繕や簡易的な補修であれば、自社スタッフが迅速に対応できるため、スピード感が求められる現場に有利。
- 社内にノウハウが蓄積されるため、建物の履歴管理や設備特性の把握が容易になる。
- 施工費用を外部発注に比べて抑えられるケースがある。
デメリット
- 専門スタッフの人件費や、必要な資格の取得・維持費など、運用コストが増大する。
- 大規模な改修工事や専門的な施工が求められる場合、最終的には外部委託が必要となるケースがある。
- スタッフの技術レベルが十分でない場合、業務範囲をカバーしきれず、トラブルやミスが発生する恐れがある。
5-3. 最適化の考え方
営繕の最適化は、単に「全部外注する」か「全部内製化する」という二者択一ではなく、建物の規模・用途、オーナーの方針、さらには管理会社の得意分野などを考慮し、どの部分を内製化し、どの部分を外部委託するかを柔軟に組み合わせることが重要です。
例えば、日常的な小規模修繕(壁の穴埋めや小さな水漏れ修理など)は内製化して迅速に対応し、同時に大規模なリニューアルや専門性の高い設備工事は、実績のある外部業者に一括委託する、といった運用が考えられます。
管理会社によっては、営繕業務を部分的に内製化しているケースも多く、その場合は迅速な対応とコストメリットを享受しやすいと言えます。ただし、最も大切なのは、オーナーの意向、予算、そして建物の状態に合わせ、最適な方法を常に模索する姿勢です。
6. BMをより効果的に活用するための6つのヒント
(1) オーナーの運営方針を管理会社と共有
「高級路線で行きたい」「共用部をカジュアルに使いやすくしたい」など、オーナーの理想像を明確に示すと、管理会社も具体的な運用プランを立てやすくなります。ビルのコンセプトやブランディング方針を最初から共有しておきましょう。
(2) 定期的な打ち合わせと報告確認
BM業務は日常のルーティンが中心となりがちですが、定期的(例えば月1回や四半期ごと)に報告を受ける機会を設けると良いでしょう。清掃状況や設備の稼働具合、不具合の有無などを確認しながら、必要な改善策を検討します。
(3) 設備更新のタイミングを見極める
空調やエレベーターの大型設備は、故障が起きるとテナントの業務にダメージが及びます。BM担当者と連携し、メーカー推奨寿命を参考にしながら、計画的に更新計画を立案することがリスク回避のポイントです。
(4) 清掃の質を上げて印象アップ
エントランスや共用部が汚れていると、「このビルは管理が行き届いていない」と見られがちです。日常清掃だけでなく、専門業者による定期クリーニングを組み合わせることで、常に美観を保ちましょう。
(5) トラブル対応フローの周知
空調停止や漏水などのトラブルは、オフィスビルの日中に起こると企業活動そのものに影響します。テナント向けに「何か問題があったらどこに連絡すればよいか」を明確に周知し、管理会社の緊急連絡先や休日対応の可否を共有することが重要です。
(6) デジタルツールを活用
IoTセンサーやクラウド管理システムを導入することで、清掃・設備管理の効率化や可視化が可能になります。BM担当者と相談しながら、ビルやテナントのニーズに合った技術を選ぶと効果的です。
7. トラブル事例から見るBMの実際
BMがどのように機能するかを理解するためには、具体的なトラブル事例を見てみるのが一番わかりやすいでしょう。以下に、オフィスビルでありがちなトラブルと、BMによる解決例を示します。
7-1. エレベーター停止トラブル
【状況】
朝の出勤時にエレベーターが停止し、乗客が閉じ込められた。
【BM対応】
- 管理会社の緊急連絡網を通じて警備・設備担当が即座に駆け、メーカーとも連絡を取りながら、非常時対応マニュアルに沿って乗客を救出
- メーカーに障害原因の調査を依頼
- 通常業務時間帯だったため、テナント企業へ遅延や混雑を回避するための周知を行う。
- メーカーによる調査結果を受けて、部品交換や再点検を実施
- テナント各社へ経緯や再発防止策を報告
スピードと適切なコミュニケーションが被害拡大を防ぐカギとなります。
7-2. 給排水の水漏れ
【状況】
テナントから「女性トイレの床に水が溜まっている」と通報があり、担当者が直行、点検したところ配管のパッキン劣化が原因。
【BM対応例】
- 担当者が状況確認後、すぐに営繕担当へ連絡
- 社内営繕チームが即日パッキン交換 → 漏水被害を最小限に
- 影響範囲を確認し、念のため周辺部位も一緒に点検。周辺施設への二次被害を防ぐため、必要に応じて、除湿・清掃対応も手配。
- オーナーとテナントに対し、再発防止策と経緯報告を迅速に共有
【ポイント】
社内営繕チームが対応して、外部業者手配の手間やコストを省略でき、テナントの不満も抑えられた
7-3. セキュリティの不審者侵入
【状況】
夜間に、ICカードを持たない外部者が建物内で徘徊しているとの人感赤外線センサーで通報。
【BM対応】
- 警備会社の担当が状況確認の上、現場に急行し、声掛け・退去指示
- 入退館システムのログを照合し、不正アクセスの有無を調べる
- オーナーやテナントへ状況報告と再発防止策(セキュリティレベル引き上げなど)を提案
【ポイント】
警備会社との連携を踏まえた、日頃の警備体制やマニュアルが整備されているかが、こうした緊急時に試されます。
7-4. 外部ガラス面の汚れ・落下物リスクの安全確認
【状況】
ビルの外壁ガラス部分に汚れや蜘蛛の巣が目立ち、入居企業からクレームが発生。念のため、落下物リスクを想定した安全点検を実施。
【BM対応例】
- 定期的なガラス清掃とは別に、別途対応
- 清掃時に外壁や窓枠の劣化具合を点検し、必要があれば営繕チームへ補修依頼
- 作業を行う際、テナント企業や近隣への安全告知を徹底
【ポイント】
- 高所清掃は専門業者と連携が必要。
- 清掃と点検を同時に行うべく手配し、追加工事や日程調整の手間を省く
8. よくある質問(BMに関するFAQ)
Q1. 大手管理会社と中小管理会社、どちらがBMに向いている?
A. 大手は広範囲にわたる実績とネットワークを持ち、最新技術の導入や大量発注によるコストメリットなどを活かしやすいです。一方、中小の管理会社は地域密着型のきめ細かい対応や迅速な現場対応が期待できます。物件の規模や所在エリア、オーナーが求めるサービス水準に合致する方を選ぶのがベストです。
Q2. 24時間対応は絶対に必要でしょうか?
A. オフィスビルの稼働時間帯やテナント企業の業務形態によって異なります。コールセンター等、夜間・休日に稼働するテナントが入居している場合は24時間対応が望ましいですが、通常の業務時間帯のみ稼働する企業が大半であれば、緊急時の一次対応フローだけ明確にしておけば事足りるケースもあります。
Q3. BM担当者が変わるたびに、トラブルが繰り返されるのでは?
A. 管理会社によっては担当者異動が頻繁に起きることもあります。大切なのは引き継ぎの仕組みがしっかり整備されているかです。オーナーやテナントが要望や過去の経緯を何度も説明しなくても済むよう、履歴管理や業務マニュアルが整っているかを確認しましょう。
9. 当社サービス紹介
弊社では、オフィスビルのBMサービスについて、設備管理・清掃・セキュリティ・緊急対応などをトータルにサポートしております。
- 設備管理
定期点検や保守スケジュールの立案・実行を行い、稼働状況を可視化して改善提案を続けます。ンプライアンスを重視した法定点検も、それぞれ有資格者により実施します。 - 清掃・衛生管理
プロフェッショナルな清掃スタッフが日常清掃から定期クリーニングまでをカバー。当社基準に基づいた仕様を業者と取り交わし、定期的な現場チェックも行い、品質維持に努めています。 - セキュリティ・防犯
警備会社と連携して、監視カメラや人感赤外線センサーの配置、最新のICカードシステム・顔認証による入出管理を行い、建物全体の安全性を確保します。 - 営繕対応
小規模修繕は内製化チームで迅速に対応可能。大規模改修や専門工事が必要な場合でも、信頼できる外部パートナーと連携します。 - 原状回復工事、オフィス設計工事
テナントの退去後の原状回復工事、リノヴェーション対応のオフィス設計工事等、オーナー様の基本仕様に基づき、工事施工、工事管理を実施します。 - デジタルツールの活用
オーナー様向けのオンラインポータルを設置し、トラブル報告等もスムーズに行えます。
このように、BMのあらゆる領域で柔軟に対応する体制を整えており、オーナー様の運営方針・ご予算に合わせた最適なプランをご提案いたします。
10. 今後の展望:オフィスビルのBMはどこへ向かうのか
リモートワークの普及により、オフィスビルの稼働率や利用形態は大きく変化していくと考えられます。ただし、「一定数の従業員がオフィスに集まって働く」スタイルが完全になくなるわけではなく、企業の中でもチームワークや対面コミュニケーションを重視する働き方は依然として求められています。
- フレキシブルオフィスの需要
テナントがコワーキングスペースや小規模会議室をフレキシブルに利用できる環境を整える動きが進むでしょう。これに伴い、清掃のタイミングやエリアの増減などをより緻密に管理する必要が出てきます。 - スペースの多用途化と清掃の複雑化
休憩スペースやカフェラウンジ的な共用部が増えれば、その分だけ清掃・メンテナンスの範囲も広がることに。利用時間帯や利用方法に合わせた柔軟な清掃計画が求められます。 - IoT技術のさらなる普及
空調・照明の自動制御だけでなく、利用者の動線把握や混雑状況のリアルタイム表示など、新たな管理手法が続々と登場。清掃や営繕にもAIを活用した予知保全の仕組みが広がっていく可能性があります。
これらの変化に追随できるBM会社を選び、継続的なコミュニケーションを取ることが、ビルオーナーにとっては重要な経営戦略の一部となるでしょう。
11. まとめ:バランス感覚がカギとなるBM運用
オフィスビルのBMは、単に一つの要素(清掃、設備管理、セキュリティなど)を重視すればよいというものではなく、全体を俯瞰してバランスよく整えることが求められます。日常清掃や設備点検、トラブル対応など、多様な業務を横断的に管理できるプロフェッショナルとの連携こそが、テナント企業の満足度とビルの資産価値を高める近道です。
- 清掃:美観や衛生環境を維持し、テナントや来訪者の第一印象を向上
- 設備管理:故障リスクを抑え、安定稼働を実現
- セキュリティ:情報漏洩や不正侵入などのリスクを低減
- 営繕:トラブルや劣化を早期に発見し、必要に応じて迅速修繕
また、営繕を完全に外部委託するか、一部を内製化するかは、建物の状況やオーナーの方針によって最適解が異なります。管理会社がどこまで対応可能か、どういった場合にどの業者を選ぶかなど、細かいフローを確認しながら、メリット・デメリットをしっかりすり合わせるのが大切です。
最後に重要なのは、オーナー自身も管理会社に丸投げせず、定期的にコミュニケーションを取りながら改善を続ける姿勢です。BMは長期的な視点で取り組むほど効果が高まり、テナントとの信頼関係も深まっていきます。ぜひ本稿を参考に、オフィスビル運営におけるBMの役割や管理会社選びのポイントを今一度見直し、より安定したビル経営を実現していただければ幸いです。
おわりに
オフィスビルにおけるBMは、ビルの安定稼働と資産価値の維持・向上を担う要です。清掃や設備管理、セキュリティ、トラブル対応まで、多くの業務が連携し合うことで、テナント企業が安心して働ける環境が実現します。
管理会社を選ぶ際は、オフィスビル特有のニーズに応えられる専門性やコミュニケーション力、コスト構造の透明性、緊急時対応の迅速さなど、複数の観点から検討することが必要です。また、営繕については、すべて外部に委託する方法から一部内製化まで様々な形があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。オーナーの方針とビルの現状を踏まえながら、最適なバランスを模索していきましょう。
本稿が、ビルオーナーや管理担当者の皆様の課題整理や、より良い管理会社との連携構築に少しでもお役に立てば幸いです。テナントからの信頼を得るうえでも、日常の運用品質を高め、将来的なリニューアルや設備更新を計画的に進められるBM体制を目指していただければと思います。
執筆者紹介
株式会社スペースライブラリ プロパティマネジメントチーム
飯野 仁
東京大学経済学部を卒業
日本興業銀行(現みずほ銀行)で市場・リスク・資産運用業務に携わり、外資系運用会社2社を経て、プライム上場企業で執行役員。
年金総合研究センター研究員も歴任。証券アナリスト協会検定会員。
2025年8月25日執筆
