築20〜30年を超えるオフィスビルでは、エレベーターの老朽化や朝の混雑がテナント満足度や建物の競争力に影響することがあります。

しかし、必ずしも本体交換が唯一の解決策ではありません。

本コラムでは、待ち時間が発生する原因を整理するとともに、費用対効果の高い改修方法や運用改善のポイントを解説します。

限られた予算で建物価値を維持・向上させたいオーナーの方はぜひ参考にしてください。


  • どんな人向け?

- エレベーターの老朽化や混雑に悩むオフィスビルオーナー

- エレベーター改修の費用対効果や優先順位を知りたい方

- 限られた予算で建物の競争力を維持・向上させたい方


  • 本コラムのポイント

- エレベーターの待ち時間が発生する原因と改善の考え方が分かる

- 制御システム更新や運用改善など、費用対効果の高い対策が分かる

- 建物価値を維持するための改修の優先順位が分かる


  • 結論

エレベーター改修は、本体交換だけが選択肢ではありません。

建物の課題を整理したうえで、制御システムの更新や運用改善、内装リニューアルなどを優先順位に沿って進めることが、限られた予算でも待ち時間の改善と建物価値の維持につながります。

エレベーター改修は本当に必要か

築20〜30年を超える中型オフィスビルでは、エレベーターの老朽化や朝の混雑がテナント満足度や建物の競争力に影響することがあります。

しかし「エレベーターを丸ごと交換しなければ改善できない」と考える必要はありません。

築古ビルでは構造上の制約も多く、制御システムの更新や運用方法の見直しだけで待ち時間を改善できるケースもあります。

まず重要なのは、現在の課題を整理し、優先順位を付けて改善することです。

例えば、次のような状況が見られる場合は改修や運用改善を検討するタイミングといえます。


  • 朝の出勤時間帯に行列ができる
  • ドアの開閉が遅く感じる
  • 停止時の揺れや異音が目立つ
  • テナントから待ち時間に関する相談が増えている


こうした状況は、設備の老朽化を感じさせるだけでなく建物全体の印象やテナント満足度にも影響します。

なぜエレベーターの待ち時間は発生するのか

築20〜30年程度の中型オフィスビルでは、朝の出勤時間帯に利用者が集中し、エレベーターが混雑するケースがあります。

例えば、8階建て・1フロア約100坪のオフィスビルで、7フロアに約190名が勤務している場合、エレベーター1台では朝のピーク時に混雑が発生しやすくなります。

運用輸送能力混雑状況
1台一度に運べる人数が限られる行列が発生しやすく、待ち時間が長くなる
2台輸送能力が向上する混雑は緩和されるが、ピーク時は待ち時間が残る場合がある

特に問題になるのは、実際の待ち時間よりも「待たされている」と感じる時間です。

例えば、乗り逃した直後にドアが閉まると、次の到着まで約1分待つことになります。

この時間は数字以上に長く感じられ、テナントのストレスにつながります。

そのため、エレベーター改修では速度だけでなく、待ち時間を減らす運用や制御の見直しも重要になります。

費用対効果が高いエレベーター改修とは

エレベーター改修というと、本体交換をイメージする方も多いでしょう。

しかし、中型オフィスビルではすべてを更新するより、優先順位を付けて段階的に改善する方が費用対効果は高くなります。

優先順位① 制御システムの更新

築20年以上のビルでは、制御システムを更新することで待ち時間や運行効率が改善する場合があります。

新しい制御システムへ更新することで、次のような効果が期待できます。


  • 停止回数を減らし、待ち時間を短縮できる
  • 複数台運用では運行を最適化し、混雑を分散しやすくなる
  • エレベーターの運行効率が向上する


ビルの規模や運用台数によって最適な制御方式は異なるため、更新内容は建物に合わせて検討することが重要です。


エレベーターを含む設備は、個別に更新するだけでなく建物全体の設備管理として計画的に考えることが重要です。

あわせて読みたい: [ オフィスビルの設備管理とは?管理品質を高めて長期入居につなげるポイントを解説 ]

優先順位② 機械設備の更新

モーターやドア駆動部の老朽化は、異音、振動、ドア開閉の遅れなどの原因になります。

これらを更新することで、運行性能だけでなくテナントが感じる快適性も向上します。

優先順位③ 内装リニューアル

内装の見直しも、費用対効果が高い改善策の一つです。

比較的低コストで実施しやすい例として、次のようなものがあります。


  • LED照明への更新
  • 壁材や床材の刷新
  • 操作パネルの更新


待ち時間そのものは変わらなくても、エレベーターホール全体の印象が改善されることでテナントの満足度向上につながるケースもあります。

改修費用の目安

改修内容費用目安(1台あたり)
制御盤・主要機器更新約700〜1,000万円
フルリニューアル約1,500〜2,000万円
内装リニューアル約30〜50万円

重要なのは、最初から大規模更新を目指すことではありません。

建物の課題を整理し、費用対効果の高い部分から改善することが、結果として資産価値の維持につながります。

設備投資だけではない混雑緩和の方法

エレベーターの混雑は、設備更新だけでなく運営方法の見直しによって改善できるケースもあります。

大規模な設備投資が難しい場合は、次のような施策から検討するとよいでしょう。

待機階を見直す

エレベーターは、待機する階を見直すだけでも混雑を緩和できる場合があります。

例えば、朝は1階、昼休みは中間階など、利用状況に合わせて待機階を設定することで、待ち時間の短縮が期待できます。

なお、こうした設定は制御システムによって対応可否が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

低層階では階段利用を促す

2〜3階程度であれば、階段を利用した方が早いケースもあります。

階段室の照明をLEDへ更新したり、誘導サインを見やすくしたりすることで自然に階段利用を促すことができます。

その結果エレベーターの利用者が分散し、混雑緩和につながります。

テナントと協力して混雑を分散する

朝の混雑は、全テナントが同じ時間帯に出勤することが原因です。

そのため、時差出勤の案内やフレックスタイムの活用、出勤時間の分散などを管理会社から情報提供するだけでも混雑が改善する場合があります。

設備投資が不要なため、比較的取り組みやすい方法です。

待ち時間を「短く感じさせる」

待ち時間そのものを大幅に短縮できなくても「待たされている」という印象を軽減することは可能です。

例えば、次のようなことは比較的低コストで実施できます。


  • 到着階表示の更新
  • 明るい照明への変更
  • エレベーターホールの内装リニューアル


テナントは設備の性能だけでなく建物全体の印象も重視するため、こうした改善は建物の競争力向上にもつながります。

優先順位を決めて段階的に改善することが重要

築古オフィスビルでは、すべての設備を一度に更新することは現実的ではありません。

重要なのは建物の課題を整理し、優先順位を付けて改善を進めることです。

例えば、次のような考え方が有効です。

建物の状況優先したい対応
朝の混雑が目立つ制御システムの更新
異音や振動が発生している機械設備の更新
共用部の印象を改善したいエレベーターホールのリニューアル
大規模投資が難しい運用改善・待機階設定・階段利用促進

このように優先順位を整理することで、限られた予算でも効果的な改善を進められます。

エレベーター改修は単なる設備更新ではなく、テナントが安心して利用できる環境を整え、長期入居につなげるための投資です。

だからこそ、設備の性能だけでなく運用方法や共用部の印象まで含めて改善を検討することが重要です。


エレベーターだけでなく、共用部全体の競争力を高める方法については、こちらのコラムも参考にしてください。

あわせて読みたい: [ オフィスリノベーションのポイント6選|空室対策・費用・設計の考え方を解説 ]

エレベーター改修は「優先順位」が成功を左右する

築古オフィスビルのエレベーター改修では、高額な設備更新だけが正解ではありません。

建物の状況に応じて、まずは制御システムや機械設備、内装、運用方法を見直し、費用対効果の高い部分から改善を進めることが重要です。

中型オフィスビルでは「設備更新」「運用改善」「共用部の印象向上」を組み合わせることが競争力維持の近道になります。

限られた予算でも優先順位を明確にし、計画的に改善を進めることで、テナント満足度の向上と資産価値の維持につながります。

執筆者紹介
株式会社スペースライブラリ プロパティマネジメントチーム
飯野 仁

東京大学経済学部を卒業
日本興業銀行(現みずほ銀行)で市場・リスク・資産運用業務に携わり、外資系運用会社2社を経て、プライム上場企業で執行役員。
年金総合研究センター研究員も歴任。証券アナリスト協会検定会員。

2025年12月11日執筆

飯野 仁
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ビルメンテナンス会社は、日々の設備管理や清掃を行うだけの存在ではありません。設備管理や清掃品質、緊急時の対応力はテナント満足度や資産価値にも影響します。しかし、価格だけで委託先を選ぶと、期待した管理品質が得られないこともあります。本コラムでは、ビルメンテナンスの役割や委託会社の選び方、契約前に確認したいポイントをオーナー向けに分かりやすく解説します。どんな人向け?- ビルメンテナンス会社の選び方や見直しを検討しているオフィスビルオーナー- 管理品質を維持しながら、長期的なビル運営を実現したい方- 委託契約で失敗しないための確認ポイントを知りたい方本コラムのポイント- ビルメンテナンスと清掃業務がビル経営で果たす役割が分かる- 委託会社を選ぶ際に確認したいポイントが分かる- 管理品質を維持するための考え方や最新動向が分かる結論ビルメンテナンス会社は日常業務を担うだけでなく、設備管理や修繕提案を通じてビル運営を支えるパートナーです。委託会社を選ぶ際は価格だけではなく、実績や提案力、緊急時の対応体制まで総合的に比較することが重要です。自社ビルに合った管理体制を構築することが、管理品質の向上と長期的な資産価値の維持につながります。 目次ビルメンテナンスと清掃業務がビル経営で重要な理由ビルメンテナンス会社へ委託する理由委託業者の種類と選び方委託会社を比較する際のポイント契約前に確認したいポイントビルメンテナンス業界の最新動向管理会社選びで失敗しないためにまとめ ビルメンテナンスと清掃業務がビル経営で重要な理由 ビルメンテナンスは建物の安全性や快適性を維持し、長期的な資産価値を守るために欠かせない管理業務です。特に賃貸オフィスビルでは、設備の故障や共用部の清掃品質がテナント満足度や契約更新に影響します。例えば、空調が故障しやすいビルや共用部の清掃が行き届いていないビルは「管理が行き届いていない建物」という印象を与えやすくなります。反対に、設備が安定して稼働し、共用部が清潔に保たれているビルはテナントに安心感を与え、長期入居につながります。主な業務は次のとおりです。空調・電気・給排水設備の点検共用部の清掃・衛生管理設備トラブルへの緊急対応修繕計画や改善提案法令に基づく点検・報告業務これらを計画的に実施することで、設備故障の予防や修繕費の抑制につながります。 ビルメンテナンス会社へ委託する理由 現在、多くのオフィスビルでは、ビルメンテナンス業務を専門会社へ委託しています。設備管理や法令対応には専門知識が求められ、受変電設備や消防設備などは、有資格者でなければ対応できない業務もあります。また、24時間対応や緊急時の初動体制を確保しやすいことも、専門会社へ委託するメリットです。主なメリットは次のとおりです。 委託するメリット期待できる効果専門知識を活用できる設備管理や法令対応を適切に行える管理品質を維持しやすい担当者が変わっても一定品質を保ちやすい緊急対応ができる漏水や停電などにも迅速に対応しやすい管理負担を軽減できるオーナーや管理担当者の負担を減らせる 一方で、価格だけで委託先を選ぶことはおすすめできません。対応品質や報告内容、提案力には会社ごとの差があるためです。 委託業者の種類と選び方 ビルメンテナンス会社の種類 ビルメンテナンス会社は、対応範囲によって大きく3種類に分けられます。総合メンテナンス会社:設備管理・清掃・修繕まで一括対応清掃専門会社:日常清掃や定期清掃に特化専門業者:空調・ガラス・消防設備など特定分野を担当例えば、中小規模オフィスビルでは、設備管理は総合メンテナンス会社へ委託し、ガラス清掃は専門業者へ依頼するケースもあります。重要なのは、建物規模や管理方針に合わせて委託範囲を決めることです。 委託会社を比較する際のポイント 会社を比較する際は価格だけではなく、次の点も確認しましょう。報告書や写真による報告体制緊急時の対応体制有資格者の在籍状況改善提案の実績管理会社は日常業務だけでなく、設備の劣化状況を把握し、更新時期や修繕方法を提案する役割も担います。「依頼された業務だけを行う会社」よりも「建物全体を見ながら提案できる会社」の方が長期的なビル経営につながります。 契約前に確認したいポイント 委託会社を選ぶ際は、見積金額だけで判断するのではなく契約内容や対応範囲まで確認することが重要です。価格が安くても、対応範囲が限られていたり緊急対応が別料金だったりすると、管理コストが高くなる場合があります。契約前には、次の点を確認しておきましょう。実績:同規模・同用途のビル管理実績があるか料金体系:見積もりの内訳や追加費用が明確か契約範囲:対応業務や責任範囲が整理されているか緊急対応:夜間・休日の対応体制があるか保証体制:作業ミスや設備トラブル時の対応が明確かまた、初めて委託する場合や委託先を変更する場合は3〜6か月程度の試験運用を行い、清掃品質や報告内容、担当者との連携を確認する方法も有効です。万一に備えて、中途解約の条件や業務の引き継ぎ方法も契約前に確認しておくと安心です。 ビルメンテナンス業界の最新動向 近年は、人手不足や環境配慮への意識の高まりを背景に、ビルメンテナンスの管理方法も変化しています。特に注目されているのが、IoTやAIを活用した設備管理です。例えば、次のような取り組みが広がっています。設備異常をセンサーで検知する電力使用量を分析して省エネにつなげる清掃ロボットを活用する環境負荷の少ない資材を採用する空気環境の管理や消毒作業を強化するこうした取り組みは、管理業務の効率化や建物品質の維持につながります。ただし、新しい設備を導入することが目的ではありません。重要なのは、自社ビルの課題に合った方法を選び、管理品質の向上につなげることです。 管理会社選びで失敗しないために 管理会社選びでよくある失敗は、価格だけで判断してしまうことです。例えば、次のようなケースでは運営に支障が出る可能性があります。 よくある失敗起こりやすい問題安さだけで選ぶ清掃品質や対応品質が低下する相見積もりを取らない適正価格を判断できない契約範囲を確認しない追加費用が発生しやすい報告体制を確認しない設備異常の発見が遅れる 一方、建物の状況を把握し、修繕や設備更新まで提案できる会社は長期的なビル運営を支えるパートナーです。管理会社は日々の管理だけでなく、将来の資産価値にも影響する存在です。価格だけではなく、提案力や対応力、報告体制まで含めて比較することが管理会社選びで失敗しないポイントといえます。 まとめ ビルメンテナンスと清掃業務は、建物を維持するためだけの仕事ではありません。設備管理や清掃品質は、テナント満足度や建物価値を左右する重要な要素です。委託会社を選ぶ際は価格だけで判断せず、実績や対応力、報告体制、緊急時の対応まで確認することが重要です。また、IoTを活用した設備管理や省エネ対応など、ビルメンテナンスのあり方も変化しています。自社ビルの規模や運営方針に合った管理体制を構築し、信頼できる管理会社と長期的な関係を築くことが、安定したビル運営と資産価値の維持につながります。 【無料】ビル管理会社のご相談はこちら 執筆者紹介 株式会社スペースライブラリ  星野 正 ビルメンテナンス業に従事して20年以上。当社では管理・工事・開発支援に携わり、品質向上に取り組んでいます。 ビルメンテナンス・工事についてのご不明点は是非お問い合わせください。 2026年4月7日執筆

ビル管理会社選びで勘違いされやすいこと|会社名や規模だけでは判断できない理由

「大手だから安心」「有名な会社だから間違いない」と考えて管理会社を選んでいませんか。実はビル管理会社選びで重要なのは会社名や規模ではなく、自社ビルの課題や運営方針に合った管理体制を構築できるかどうかです。本コラムでは、管理会社選定で見落とされがちな判断軸や比較のポイントを、オーナー様目線で分かりやすく解説します。どんな人向け?- ビル管理会社の見直しを検討しているオーナー様- 「大手だから安心」と考えて管理会社を選ぼうとしている方- 自社ビルに合った管理会社の見極め方を知りたい方本コラムのポイント- 会社名や規模だけでは管理会社を判断できない理由が分かる- 管理会社選びで失敗しやすいポイントと対策を理解できる- 自社ビルに合った管理体制を見極める判断軸が分かる結論ビル管理会社は、知名度や会社規模だけで選ぶものではありません。重要なのは自社ビルの課題を理解し、継続的に対応できる体制を持っているかどうかです。対応範囲、緊急対応、提案力、報告体制などを比較し、自社に合ったパートナーを選ぶことが安定したビル経営につながります。 目次ビル管理会社選びでまず押さえるべき考え方管理会社を比較する際に見るべき7つのポイント管理会社選びで失敗しやすい4つのパターン大手と中小、それぞれの特徴を理解する東京の中小規模ビルで重視すべきは「実務対応力」 ビル管理会社選びでまず押さえるべき考え方 ビル管理会社を選ぶ際に大切なのは、会社名や規模だけで判断しないことです。大手には組織力や安定感があり、中小規模の会社には柔軟性や距離の近さがあります。どちらが正解という話ではありません。自社ビルの規模、築年数、テナント構成、オーナー様がどこまで管理に関われるかによって、最適な依頼先は変わります。特に東京の中小規模ビルでは、日常清掃、設備点検、緊急対応、テナント対応、修繕提案まで現場で起きる課題が幅広く発生します。そのため、単に「安い会社」や「名前を知っている会社」ではなく、自分のビルの課題を理解し、実務として動ける会社を選ぶことが重要です。 管理会社を比較する際に見るべき7つのポイント 管理会社を比較する際は、次の7点を確認してください。対応範囲:清掃だけでなく、設備・修繕・テナント対応まで一括して任せられるかを判断するため。緊急対応:夜間や休日の水漏れ・停電発生時の被害拡大を防ぐため。管理実績:同規模・同用途のビル管理経験があるほど、実務的で的確な対応が期待できるため。提案力:修繕計画やコスト削減策を先回りして提案できるかを見極めるため。費用の明確さ:追加費用の発生条件や契約範囲を把握するため。報告体制:遠方オーナーでも建物状況を適切に把握できるため。地域対応力:現場への駆けつけ速度や協力業者の手配力に差が出るため。この中でも特に重視すべきなのは、対応範囲・緊急対応・報告体制です。オーナー様が本業を持っている場合、日々の細かな判断やテナント対応に時間を取られると、ビル経営そのものが負担になります。管理会社は、単なる作業代行ではなく、オーナー様の判断を支える実務パートナーです。今回ご紹介したポイント以外にも、契約内容や管理体制の確認方法など管理会社選定時に押さえておきたい項目があります。詳しくは以下のコラムで解説しています。あわせて読みたい: [ ビル管理会社の選び方|オーナーが確認したい8つのポイントを解説 ] 管理会社選びで失敗しやすい4つのパターン 管理会社選びでよくある失敗は、次の4つです。料金だけで決めてしまう契約内容を細かく確認しない物件規模や用途と合わない会社を選ぶ1社だけで即決してしまう管理費を抑えること自体は悪くありません。ただし、安さだけで選ぶと清掃頻度が不足したり、緊急対応が別料金だったり、報告が不十分だったりすることがあります。その結果、共用部の印象が悪くなり、テナント満足度や募集時の印象にも影響します。管理費は「安ければ良い費用」ではなく、建物価値を維持するための投資です。見積もりを比較する際は、金額だけでなく「どこまで含まれているか」「誰が対応するか」「追加費用はいつ発生するか」まで確認する必要があります。管理費を見直したい場合は、管理会社を変更する前に現在の管理仕様が適正か確認することも重要です。費用削減の考え方については、以下のコラムで詳しく解説しています。あわせて読みたい: [ オフィスビルの管理費削減は「相見積り」の前に|管理仕様見直しのポイントを解説 ] 大手と中小、それぞれの特徴を理解する ビル管理会社には、全国展開する大手企業から地域密着の中小企業までさまざまです。それぞれで期待できるメリットと、注意すべきポイントが異なります。簡単に比較すると以下の通りです。 視点大手ビル管理会社中小規模の管理会社サービス体制専門部署によるワンストップ対応人員が豊富で24時間体制も万全業務範囲は限定的(外部連携で対応)担当者が幅広い業務を兼務柔軟性標準化されたサービスが中心個別対応はルールの範囲内物件に合わせて柔軟に内容を調整オーナーの細かな要望に寄り添うコミュニケーション窓口と現場が分かれることも報告や連絡は定期的な「文書」が傾向担当者が固定で直接やり取りしやすい経営層と話が通りやすくスムーズコスト組織維持費がかかる分、料金はやや高め比較的安価なケースが多い必要なサービスだけ選んでコスト調整可信頼性・安定感豊富な実績と組織力による安心感急な欠員や大型案件にも即対応現場の入れ替わりが少なく長期の付き合い担当者レベルでの信頼関係が築ける 大手の安心感と中小企業のきめ細かさ、どちらを重視するかは物件の状況やオーナー様の方針次第です。つまり、選ぶ基準は会社の大きさではありません。自社ビルに必要な管理を無理なく、継続的に、責任を持って実行できるかです。 東京の中小規模ビルで重視すべきは「実務対応力」 東京の中小規模ビルでは、現場対応の早さと柔軟性が経営に直結します。共用部の汚れや設備不具合、テナントからの問い合わせなどは、小さな問題に見えても放置すれば退去や空室リスクにつながるためです。そのため管理会社を比較する際は、会社名や規模ではなく実際の提案内容を確認することが重要です。例えば次のようなポイントは必ず確認しておきたいところです。自社ビルの課題を理解しているか見積もりの内訳が明確か緊急時の連絡体制が整っているか報告方法や報告頻度が分かりやすいか修繕やコスト見直しの提案が具体的かこれらを比較することで表面的な知名度ではなく、本当に任せられる会社かどうかが見えてきます。ビル管理会社は一度契約して終わりではありません。日々の清掃、設備管理、報告、トラブル対応の積み重ねが建物の印象や資産価値を左右します。だからこそ、自社ビルの状況に合った管理体制を選ぶことが重要です。 東京23区の中小規模ビル管理ならスペースライブラリへ 株式会社スペースライブラリでは、東京23区を中心に中小規模オフィスビルの管理をサポートしています。清掃・設備管理・テナント対応・修繕相談まで一貫して対応し、オーナー様の負担軽減と安定したビル運営を支援しています。遠方にお住まいの方や本業が忙しくビル管理に時間を割けない方は、一度管理体制の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。 【無料】管理体制のご相談はこちら 執筆者紹介 株式会社スペースライブラリ  星野 正 ビルメンテナンス業に従事して20年以上。当社では管理・工事・開発支援に携わり、品質向上に取り組んでいます。 ビルメンテナンス・工事についてのご不明点は是非お問い合わせください 2026年4月2日執筆

オフィスビルの空調設備更新|GHP・EHPの違いと補修・改修・更新の判断基準

築年数が経過したオフィスビルでは、空調設備の不具合や更新時期について判断に迷う場面があります。しかし、空調が効かないからといって、すぐに設備更新が必要とは限りません。まずは原因を切り分け、補修・改修・更新を適切に判断することが重要です。本コラムでは、GHPとEHPの違いや更新判断の目安、築古ビルで空調設備を見直す際のポイントを分かりやすく解説します。どんな人向け?- 築古オフィスビルで空調設備の更新時期に悩んでいるオーナー- GHPとEHPの違いや、自社ビルに適した方式を知りたい方- 補修・改修・更新の判断基準を整理し、設備投資を適切に進めたい方本コラムのポイント- GHPとEHPの特徴や選び方のポイントが分かる- 空調が効かない原因を切り分ける方法と適切な対応が分かる- 補修・改修・更新を判断する目安と進め方が分かる結論空調設備の更新は、築年数だけで判断するものではありません。まずは原因を切り分け、設備の状態や部品供給、テナントへの影響などを総合的に確認したうえで、補修・改修・更新を判断することが重要です。適切なタイミングで設備を見直すことが、安定したビル運営と資産価値の維持につながります。 目次空調はテナント評価に直結する設備GHPとEHPの違い|方式ごとの特徴導入前に確認したいポイント空調が効かない原因は3種類ある補修・改修・更新の判断基準築古ビルで空調更新を成功させるポイントまとめ 空調はテナント評価に直結する設備 オフィスビルにおいて、空調はテナント満足度を左右する重要な設備です。現場では「冷えない」「暖まらない」「部屋ごとに温度が違う」「異音や異臭がする」といった相談が多く寄せられます。東京の中小規模オフィスでは個別空調を採用する建物が多く、こうした不具合はテナント満足度の低下につながります。特に築年数が経過した設備では、冷暖房性能だけでなく、故障時に確実に復旧できるかが重要になります。部品がなく修理できない復旧まで時間がかかる修理しても同じ故障を繰り返すそのためオーナーは保守で維持できる範囲と、改修・更新へ進むタイミングをあらかじめ整理しておくことが重要です。 GHPとEHPの違い|方式ごとの特徴 個別空調には、GHP(ガスヒートポンプ)とEHP(電気ヒートポンプ)の2種類があります。両者の違いは、コンプレッサーを動かす駆動源です。 方式駆動源特徴GHPガスエンジンでコンプレッサーを駆動エンジン整備が必要空調以外の要因でも不調が発生するEHP電動モーターでコンプレッサーを駆動構造が比較的シンプル原因を切り分けやすい GHPとEHPはどちらが優れているかではなく、管理方法や運用コストの考え方が異なります。方式を比較する際は「ガスと電気のどちらが安いか」という燃料単価だけで判断するのではなく、固定費(基本料金・契約容量)やピーク時の契約料金への影響、保守・整備を含めた維持費まで比較することが重要です。また、設備が老朽化すると重要になるのは故障時に確実に復旧できるかという視点です。修理できるか早く復旧できるか故障を繰り返さないか導入時の費用だけでなく、更新時の対応や維持管理まで含めて自社ビルに適した方式を選ぶことが重要です。 導入前に確認したいポイント 導入前に確認したい3つのポイント 空調設備を更新する前に、まずは建物の設備条件や工事条件を確認することが重要です。特に、次の3つは事前に確認しておきたいポイントです。電気設備の容量EHPへ入れ替える場合は、受電設備や幹線容量に余裕が必要です。不足している場合は、空調設備とは別に電気設備の更新工事が必要になることがあります。室外機の設置条件室外機の設置スペースや搬入経路を確認します。GHPでは排気設備も考慮しなければなりません。入居中工事への影響更新工事では、空調停止時間、騒音・振動、テナントへの影響を事前に整理する必要があります。 GHPとEHPの比較ポイント 設置条件を確認したら、次はどの方式が自社ビルに適しているかを判断します。比較する際は、快適性・復旧性・運用コストの3つを判断軸にすると整理しやすくなります。 判断軸GHPEHP快適性暖房立ち上がりに優れる冷暖房性能が安定している復旧性定期整備が重要原因を特定しやすい運用コストピーク電力を抑えやすい管理を一元化しやすい どの方式にもメリットと注意点があります。重要なのは設備単体で判断するのではなく、建物の設備条件や運用方針、将来的な維持管理まで見据えて選択することです。 空調が効かない原因は3種類ある 空調が効かないからといって、すぐに設備更新を検討する必要はありません。まずは原因を切り分けることが重要です。 原因主な症状最初の対応運転条件始業直後だけ暑い・会議室だけ暑い運転時間や設定温度を見直す性能劣化風量低下・効きが悪い・温度ムラ清掃・点検・保守を行う故障予兆アラート・間欠停止・水漏れ・異音状況を記録し保守会社へ連絡する 1.運転条件で改善するケース 設備に異常がなくても、運転方法を見直すことで改善する場合があります。例えば、以下のような方法があります。始業30〜60分前から先行運転する会議室は利用前に運転を開始する極端な温度設定を避ける建物全体で運転ルールを統一する 2.性能劣化は保守で改善する場合がある 効きが悪くなった場合でも、すぐに更新を判断する必要はありません。まずは次の項目を確認しましょう。フィルターや送風機:風量低下の原因熱交換器:汚れによる冷暖房効率の低下ドレン配管:詰まりによる水漏れや異臭保守を実施しても改善しない場合は、空調能力だけでなく風の流れも確認しましょう。例えば「窓際だけ暑い」「会議室だけ冷えない」「特定エリアだけ温度差がある」といった症状は、吹出口の向きや温度センサーの位置、レイアウト変更による影響が原因となっていることがあります。 3.アラートや水漏れは故障のサイン 次のような症状は、故障の前兆として対応する必要があります。エラー表示が頻繁に出る運転と停止を繰り返す水漏れがある異音や異臭がする発生日時や場所、エラーコードなどを記録して保守会社へ伝えることで、原因を特定しやすくなります。焦げ臭さや漏電の疑いがある場合は無理に運転を続けず、安全を優先して対応しましょう。焦げ臭さや漏電の疑いがある場合は無理に運転を続けず、安全を優先して対応しましょう。空調設備のトラブルを未然に防ぐには、日頃の設備管理も欠かせません。設備管理の考え方については、こちらのコラムもご覧ください。あわせて読みたい: [ オフィスビルの設備管理とは?管理品質を高めて長期入居につなげるポイントを解説 ] 補修・改修・更新の判断基準 保守や補修を行っても改善しない場合は、改修・更新を検討します。重要なのは、築年数だけで更新を判断しないことです。更新を検討する目安は次のとおりです。アラートや停止が増えている補修しても同じ不具合を繰り返す原因特定に時間がかかる部品供給が不安定になっている更新は、次の3つのフェーズに分けて判断すると進めやすくなります。 フェーズ状況対応注意軽微な停止や不具合情報整理・更新準備検討再発や補修の増加補修と更新を比較決断停止頻発・部品供給終了更新計画を具体化 また、工事方法も建物の状況に応じて選択します。局所改修:一部エリアのみ更新、工期や影響を抑えやすい系統改修:設備系統ごとに更新、停止範囲を限定しやすい全体更新:設備全体を更新、更新効果は高いが影響も大きい空調設備の更新は、長期修繕計画の中で他の設備更新とあわせて検討すると、工事やコストを効率的に進めやすくなります。長期修繕計画については、こちらのコラムで詳しく解説しています。あわせて読みたい: [ オフィスビルの長期修繕計画とは?計画的に資産価値を高めるために ] 築古ビルで空調更新を成功させるポイント 築古ビルでは「古いから更新する」という考え方では適切な判断はできません。重要なのは、次の3点を整理することです。補修で維持できるか運転を継続できるかテナントへの影響を抑えられるか更新工事では、設備性能だけでなく工事時期や停止時間、テナント対応まで含めて計画する必要があります。更新を目的にするのではなく、安定したビル運営を実現する手段として考えることが重要です。 まとめ 空調設備は、テナントの快適性だけでなく建物全体の評価や資産価値にも影響する重要な設備です。築古ビルでは「効く・効かない」だけでなく、故障時に確実に復旧できるかという視点が欠かせません。空調トラブルが発生した場合は、以下の順番で原因を整理することが重要です。運転条件を見直す保守・点検を行う故障予兆を見極めるゾーニングを確認するそのうえで、停止頻度や再発状況、部品供給の見通しなどを踏まえて補修・改修・更新を判断することで、無駄な設備投資を抑えながら安定したビル運営につなげられます。 【無料】空調設備の見直し相談はこちら 執筆者紹介 株式会社スペースライブラリ プロパティマネジメントチーム 飯野 仁 東京大学経済学部を卒業 日本興業銀行(現みずほ銀行)で市場・リスク・資産運用業務に携わり、外資系運用会社2社を経て、プライム上場企業で執行役員。 年金総合研究センター研究員も歴任。証券アナリスト協会検定会員。 2026年3月5日執筆
 
 
 
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