リフォームとリノベーションの違いとは?|再生に関する用語を解説
皆さんこんにちは。
株式会社スペースライブラリの鶴谷です。
この記事は、建築再生に関する用語についてまとめたもので、2025年10月27日に執筆しています。
少しでも皆様のお役に立てる記事になればと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
オフィスの空室対策として「リフォーム」や「リノベーション」を行うことは、近年ますます注目を集めています。ところで、この「リフォーム」と「リノベーション」という言葉には、どのような違いがあるのでしょうか。この記事では、その他の建築再生に関する用語も含め、きちんと整理してみたいと思います。
本コラムは、辞書のようにお使いいただけます。建築再生に関して意味がわからない用語に出会ったら、ぜひ本コラムに戻ってご確認ください。
1.「リフォーム」と「リノベーション」の違い
まず、オフィスの再生を語る上で基本となる「リフォーム」と「リノベーション」の違いを確認しましょう。一般的には、以下のように区別されることが多いです。
リフォーム(Reform)
- ・既存の設備や内装が老朽化・破損した部分を、元の状態に戻す・新しく直す工事を指します。
- ・具体的には、古くなった壁や床材を貼り替えたり、壊れた水まわり設備を交換するなどが典型的な例です。
- ・比較的簡易な工事が多い一方、建物の性能やコンセプトそのものを大きく変えるようなことはあまり想定していません。
- ・英語では、服の仕立て直し等の意味で使われることがあります。
リノベーション(Renovation)
- ・元の設計やイメージを大きく変える、建物の価値を「刷新」するための改修工事を指します。
- ・単なる補修に留まらず、意匠設計や機能性の観点から大幅にアップグレードし、建物の資産価値を向上させることが大きな目的となります。
- ・空間の間取りやデザインを一新し、最新の設備を導入するなど、ある程度の広さを伴う大掛かりな工事である場合が多いです。
- ・英語では、広く「再生」を意味します。
オフィスビルにおいても、単に古くなったトイレを取り替える「リフォーム」にとどまらず、ビル全体のコンセプトやブランドイメージに合わせてデザインを一新する「リノベーション」を行うほうが、空室対策として高い効果が期待できます。共用部を刷新してイメージアップを図るだけでなく、働く人にとっての利便性や快適性を向上させることで、「このビルに入居したい」という明確な魅力を打ち出すことができるのです。
2.その他の建築再生に関する用語(英語)
リニューアル(Renewal)
- ・リノベーションが「ある程度の広さを持ったグレードアップ・改修工事」を指すのに対して、部分的な改修にもビル全体の改修にも使われることがあります。
- ・特に非住宅の再生を指して用いられることが多く、リフォームと違って機能や意匠をアップグレードして建物の価値を「刷新」する意味が含まれます。
- ・英語では「アーバン・リニューアル(都市再開発)」など、建て替えに近い意味で使われることもあります。
コンバージョン(Conversion)
- ・建築物の元の用途を大きく変える行為を指します。「用途変更」「転用」とも呼ばれ、英語でも同様の意味を表します。
- ・日本では、廃校になった校舎のコンバージョンや企業の社宅・寮を高齢者居住施設へ転用するなどの事例がありました。1990年代半ばからは、海外の大都市で盛んになった「空きオフィスから住宅へのコンバージョン」が注目されるようになり、一般的に使われる用語となりました。
メンテナンス(Maintenance)
- ・建物、機器、機械、情報通信システムなどのインフラを正常な状態に保つことをいいます。
- ・保守や保全とも呼ばれ、日常的な保守点検、整備、交換、修理などを含みます。英語でも同様の意味です。
モダニゼーション(Modernization)
- ・既存の建築や建築の部位を、現在の生活様式や要求に合わせる形で改良・再生することを指します。
3.建築再生に関する用語(日本語)
既存建物に手を加える行為を総称して「建築再生」と呼んでいますが、さまざまな用語が用いられています。混乱しないよう、以下に整理しておきましょう。
(*1は日本建築学会「建築物の耐久計画に関する考え方」(1988年)、*2は建築基準法第2条第5、13、14号、*3及び英語表現は松村秀一編著「建築再生学」(2016年)によります。)
維持保全 *1
対象物の初期の性能および機能を維持するために行う行為。
英語ではMaintenance。
改修 *1
劣化した建築物などの性能、機能を初期の水準以上に改善すること。これには修繕も含まれる。
英語ではImprovement、Modifying、Renovation。
改善
劣化した建築物などの性能、機能を初期の水準を上回って良くすること。
英語ではImprovement、Modifying、Renovation。
改装 *1
建築物の外装、内装などの仕上げ部分を模様替えすること。
英語ではRefinishing、Refurbishment、Renovation。
改築 *1*2
建築物の全部または一部を取り壊して構造、規模、用途を著しく変えない範囲で元の場所に立て直すこと。
英語ではRebuilding、Modifying。
改造 *3
建築部位に付加あるいは除去を行い、建築物の形態または空間構成に変更を加える行為。
英語ではRemodeling、Renovation、Alteration。
改良 *3
劣化した建築物などの性能、機能を初期の水準を上回って改善すること。
英語ではImprovement、Modifying、Renovation。
更新 *1
劣化した部材、部品、機器などを新しいものに取り替えること。その際、更新時点で普及している技術や機器を取り入れることがある。
英語ではReplacement、Renewal。
修繕 *1
劣化した躯体、部材、部品、機器などの性能あるいは機能を現状または実用上支障のない状態まで回復すること。全体の耐久性を向上し、長期的使用に耐えることを目的とする。
英語ではRepair。
修復 *3
使用に相応しくない状態にまで経年劣化してしまった建築物を修繕あるいは改良し、使用に相応しいまたは快適な状態に回復すること。
英語ではRestoration。
増築 *2
すでにある建築物の床面積を増加させることをいう。同一敷地内別棟の場合は、集団規定のように敷地単位で扱う場合に限り増築となる。
英語ではAddition、Expansion、Extention。
大規模な修繕 *2
主要構造部の1種以上の部分の過半の修繕を指す。ただし、主要構造部とは壁、柱、床、梁、屋根または階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、最下階の床、まわり舞台の床、小梁、ひさし、局部的な小階段、屋外階段、その他これに類する部分を除く。
補修 *3
改良することなしに、劣化した躯体、部材、部品、機器などの性能あるいは機能を実用上支障のない状態まで回復すること。必ずしも耐久性の向上は意識せず、応急的な措置にとどまることが多い。
英語ではRepair、Maintenance。
保全 *1
建築物(設備を含む)および諸施設・外構・植栽などの対象物の全体または部分の機能・性能を使用目的に適合するよう維持または改良する諸行為。
英語ではMaintenance and Modernization。
保存 *3
歴史的価値が認められた建築物に対し、価値の減退を防ぎ、適宜改善措置を施すことによって、これらの価値を回復させること。
英語ではPreservation、Conservation。
模様替え *1
用途変更や陳腐化などにより、主要構造部を著しく変更しない範囲で建築物の仕上げや間仕切壁などを変更すること。
英語ではRearrangement、Alteration。
以上が建築再生に関する主な用語です。用語を正しく理解し、目的に応じて使い分けることで、より効果的な再生計画を立てられるようになるでしょう。オフィスビルの空室対策や建物の長寿命化・価値向上を検討する際、ぜひ本コラムをお役立てください。
執筆者紹介
株式会社スペースライブラリ
設計チーム
鶴谷 嘉平
1994年東京大学建築学科を卒業。同大学大学院にて集合住宅の再生に関する研究を行いました。
一級建築士として、集合住宅、オフィス、保育園、結婚式場などの設計に携わってきました。
2024年に当社に入社し、オフィスのリノベーション設計や、開発・設計(オフィス・マンション)を行っています。
2025年10月27日執筆