オフィスビルの賃料アップ交渉術|退去リスクを抑えて適正賃料へ見直す方法
物価や修繕費、管理費などの上昇を受け、オフィスビルの賃料を見直す場面があります。一方、賃料改定を申し入れることで、テナントの退去につながらないか不安を感じるオーナーもいるでしょう。賃料を見直す際は、金額だけでなく周辺相場や契約内容、テナントとの関係を踏まえて進めることが重要です。
本コラムでは、賃料改定を検討する際に確認する内容とテナントへの伝え方、交渉の進め方を解説します。
- どんな人向け?
- 契約更新に合わせて賃料の見直しを検討している
- 現在の賃料が周辺相場と合っているか確認したい
- テナントとの関係を維持しながら賃料改定を進めたい
- 本コラムのポイント
- 賃料を見直す前に確認したい内容
- 賃料改定の根拠をテナントへ伝える方法
- 退去リスクを踏まえた改定条件の考え方
- 結論
賃料改定は、周辺相場が上がったという理由だけで進めるものではありません。現在の賃料や周辺相場、建物の状態、テナントとの契約内容を確認したうえで、改定する金額や時期を検討することが大切です。
賃料を見直す前に現在の条件を確認する
オフィスビルの賃料は、契約当初の金額がそのまま続くとは限りません。
長期間賃料を据え置いている間に、周辺の賃料相場や物価、建物の維持管理にかかる費用が変わることがあります。その結果、現在の賃料と周辺の水準に差が生じる場合があります。
まずは、次の内容を確認します。
| 確認項目 | 見る内容 |
|---|---|
| 現在の賃料 | 前回の賃料改定からどのくらい経過しているか |
| 周辺相場 | 近隣の同規模・同程度の物件はいくらか |
| 契約内容 | 更新時期や賃料改定に関する定め |
| 建物の状態 | 設備更新や共用部の改修状況 |
| 維持管理費 | 修繕費や管理費などの変化 |
「長く据え置いているから上げる」のではなく、現在の賃料を見直す理由があるかを整理することが最初の段階です。
賃料改定では根拠を整理して伝える
賃料改定を申し入れる場合は、テナント側にも「なぜ見直すのか」を説明する必要があります。
特に法人テナントでは、担当者だけで判断できず、社内で承認を得る場合があります。そのため、金額だけを提示するのではなく、改定理由を説明できる資料を用意しておくことが重要です。
根拠として確認したいのは、次のような情報です。
- 周辺の募集賃料や賃料水準
- 現在の賃料との差
- 建物や設備の改修履歴
- 管理費や修繕費などの変化
- 契約開始から現在までの経過
周辺相場を見る際は、立地や築年数、面積が大きく異なる物件と単純に比較しないことも大切です。
同じエリアでも、駅からの距離や貸室面積、設備、建物の状態などによって賃料は異なります。所有ビルと条件の近い物件を確認し、どの程度の差があるのかを整理します。
改定額と時期を検討する
賃料改定では、金額だけでなくテナントへ伝える時期も重要です。更新直前の申し入れでは、予算調整や社内承認の時間を十分に取れない場合があります。
契約更新の時期やテナント側の予算策定時期を確認し、余裕を持って話し合いを始めます。
また、希望する改定額を一度に反映する方法だけでなく、適用時期や金額を調整する方法もあります。
- 改定額:当初の提示額から調整
- 適用時期:改定の開始時期を調整
- 段階的な改定:複数回に分けて変更
- 契約条件:契約期間などとあわせて協議
どこまでなら調整できるのかを事前に決めておくと、テナントから別の条件を提示された場合にも検討しやすくなります。
退去した場合の影響も確認する
現在の賃料が周辺相場より低くても、必ず改定したほうがよいとは限りません。
賃料を上げた結果テナントが退去すれば、次の入居まで賃料収入がなくなり、原状回復や募集条件の調整が必要になることもあります。
そのため、賃料改定では、改定によって増える収入と退去した場合に発生する費用や空室期間をあわせて考えます。
たとえば、次のような点を確認します。
- 現在賃料と周辺相場の差
- 改定した場合の年間増収額
- 退去後の募集期間
- 原状回復や募集にかかる費用
- 現在のテナントの入居期間
賃料だけを見るのではなく、退去した場合まで含めて収支を比較することが必要です。
賃料改定前に確認したいこと
実際にテナントへ話をする前に、必要な情報を一度整理しておきます。
【賃料改定前のチェック項目】
- 現在の賃料と契約内容を確認したか
- 周辺の賃料水準を調べたか
- 比較する物件の条件は近いか
- 改定額の根拠を説明できるか
- テナントの更新時期を確認したか
- 退去した場合の収支を確認したか
- 改定額や適用時期の調整範囲を決めたか
- 合意した内容を書面で残す準備ができているか
賃料改定では、希望額を伝える前の準備が重要です。「いくら上げたいか」だけでなく「なぜその金額なのか」「どこまで条件を調整できるのか」まで整理してから話し合いを進めます。
まとめ
オフィスビルの賃料を見直す際は、周辺相場だけで判断せず、現在の契約内容や建物の状態、維持管理費なども確認する必要があります。
また、テナントへ改定を申し入れる場合は、理由を説明できる資料を用意し、検討する時間を確保することも大切です。
賃料改定による増収だけでなく、退去した場合の空室期間や費用まで比較したうえで、改定額と時期を判断します。
賃料を上げること自体を目的にせず、所有ビルの状況とテナントとの契約を踏まえて進めることが重要です。
執筆者紹介
株式会社スペースライブラリ
プロパティマネジメントチーム
藤岡 涼
入社以来20年以上にわたり、東京23区のオフィスビルを中心にプロパティマネジメント・リーシング・建物管理を担当。
年間多数の交渉やトラブル対応経験を活かし、現場目線に立った迅速かつ的確な提案を通じて、オーナー様とテナント様双方の満足度向上に努めています。
2025年12月19日執筆