オフィス賃料の決め方|相場だけではNGな理由と判断基準(前編)
オフィスビルの賃料を決める際、周辺の募集賃料は重要な参考情報です。しかし、同じエリアでも立地や設備、管理状態によってテナントからの評価は異なります。
本コラムでは、オフィスビルを所有するオーナーに向けて、賃料相場を見る際の注意点や自社ビルに合った賃料を設定するためのポイントを解説します。
- どんな人向け?
- オフィスビルの賃料を見直したいオーナー
- 周辺相場を賃料設定にどう活用すべきか知りたい方
- 空室対策と賃料のバランスに悩んでいる方
- 本コラムのポイント
- 募集賃料・成約賃料・実効賃料(NER)の違い
- 周辺相場だけでは賃料を決められない理由
- 自社ビルの特徴を賃料に反映する考え方
- 結論
オフィスビルの賃料は、周辺相場だけで決めるのではなく、立地や設備、管理状態、募集状況まで確認して判断することが重要です。相場を市場の目安として活用し、自社ビルが周辺物件と比べてどのような特徴を持つのか整理したうえで賃料を設定します。
オフィス賃料の「相場」とは?
オフィスビルの賃料を決める際は、周辺で募集されている物件の賃料を確認することが一般的です。
ただし、公開されている情報の多くは「募集賃料」です。実際の契約では、賃料交渉やフリーレントなどによって貸主が得る収入が変わるため、募集賃料と実際の収益が同じとは限りません。
まずは、賃料に関する項目の違いを確認しておきましょう。
| 項目 | 内容 | 確認する目的 |
|---|---|---|
| 募集賃料 | テナント募集時に提示する賃料 | 周辺物件の価格帯を把握する |
| 成約賃料 | 実際の契約で決まった賃料 | 市場で受け入れられた水準を確認する |
| 実効賃料(NER) | フリーレントなどを考慮した実質的な賃料 | 実際の収益を把握する |
| 空室期間 | 前テナント退去から次の入居までの期間 | 空室による収益への影響を確認する |
成約賃料やフリーレントなどの条件は、一般に確認できる募集情報だけでは分からない場合があります。
そのため、募集賃料は「この金額が適正」という基準ではなく、周辺市場を知るための判断材料として使うことがポイントです。
相場だけでは賃料を決められない理由
同じ駅から徒歩5分のオフィスビルでも、同じ賃料になるとは限りません。
テナントは駅からの距離だけでなく、建物までの移動のしやすさや貸室の使い勝手、設備、共用部の状態なども確認して物件を選ぶためです。
賃料を検討する際は、主に次のような条件を比較します。
| 項目 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 立地 | 駅からの距離、利用できる路線、視認性、周辺環境 |
| 貸室 | 面積、形状、レイアウトのしやすさ、天井高 |
| 設備 | 空調、OAフロア、電気容量、トイレなど |
| 共用部 | エントランス、廊下、エレベーターなどの状態 |
| 管理 | 清掃状況、設備管理、修繕・更新の状況 |
例えば、築年数が経過していても共用部の改修や設備の更新が行われ、管理状態が良好なビルであればテナントから評価されることがあります。
一方、相場より賃料を下げても、設備や貸室の使い勝手などに課題があれば募集期間が長くなる可能性があります。
賃料だけを見るのではなく、周辺物件と比べたときの自社ビルの特徴まで確認することが重要です。
自社ビルの特徴を賃料に反映する
周辺相場を確認したら、次に自社ビルがどのような点で評価されるのかを整理します。
相場に合わせることだけを優先すると、本来設定できる賃料より低く募集したり、反対に建物の状態に対して高い賃料を設定したりする可能性があります。
【確認しておきたい自社ビルの特徴】
- 駅からの距離や建物までの動線
- 貸室の形状やレイアウトのしやすさ
- 空調やOAフロアなどの設備
- エントランスや共用部の状態
- 清掃や設備管理の状況
- 周辺の募集物件と比べた特徴
例えば、駅からの距離が同程度でも、来訪者が建物を見つけやすい、貸室の形が整っていてレイアウトしやすいといった違いがあります。
こうした条件を整理すると、周辺相場に対して自社ビルの賃料をどの水準に設定するか判断しやすくなります。
オーナーが押さえたい賃料設定の3つのポイント
1.比較する物件を絞る
同じ駅やエリアにあるという理由だけで、すべての募集物件を比較対象にする必要はありません。
築年数や規模、駅からの距離、設備などが近い物件を選び、自社ビルと条件を比較します。
条件が大きく異なる新築・大型ビルの賃料まで含めると、自社ビルに適した水準を判断しにくくなります。
2.賃料以外の募集条件も確認する
募集賃料が同じでも、フリーレントや敷金、貸主側の工事負担などによって契約条件は異なります。
そのため、表面上の賃料だけを比べるのではなく、テナントが負担する費用や貸主側の負担も含めて確認することが必要です。
特にフリーレントを設定する場合は、募集賃料を維持できても一定期間の賃料収入がなくなります。そのため、フリーレント期間を含めた収益を確認することが重要です。
3.募集後の反応を確認する
賃料は、一度設定したらそのままにするものではありません。
問い合わせや内見が少ない場合は、賃料だけでなく、募集方法や設備、貸室の状態などに原因がないか確認します。
反対に、問い合わせや内見があるのに成約しない場合は、内見後の反応や他物件との比較状況を確認することで、見直すべき点を絞りやすくなります。
募集開始後の反応を確認し、必要に応じて賃料や募集条件を見直すことも賃料運用の一部です。
まとめ|相場だけで賃料を決めない
オフィスビルの賃料を決める際、周辺相場は重要な判断材料です。ただし、募集賃料だけを見て自社ビルの賃料を決めることはできません。
比較する物件を絞り、立地や貸室、設備、管理状態など自社ビルの条件を整理したうえで、賃料を検討することが重要です。
また、募集を開始した後は問い合わせや内見、成約までの状況を確認し、必要に応じて募集条件を見直します。
後編では、空室期間による収益への影響や実効賃料(NER)の考え方を取り上げ、実際の収益を踏まえた賃料運用について解説します。
執筆者紹介
株式会社スペースライブラリ
プロパティマネジメントチーム
藤岡 涼
入社以来20年以上にわたり、東京23区のオフィスビルを中心にプロパティマネジメント・リーシング・建物管理を担当。
年間多数の交渉やトラブル対応経験を活かし、現場目線に立った迅速かつ的確な提案を通じて、オーナー様とテナント様双方の満足度向上に努めています。
2026年4月20日執筆