都心立地の価値は今後も続くのか?築古オフィスビルの生き残り戦略を考える
都心部の築古オフィスビルは、交通利便性や周辺環境など、立地の良さを背景に賃貸需要を確保してきました。一方、働き方や企業のオフィス選びが変化するなか、立地だけで入居につながるとは限りません。
本コラムでは、都心にある築古オフィスビルを今後も安定して運営するために、オーナーが確認したいポイントや建替え・改修の考え方を解説します。
- どんな人向け?
- 都心部で築古オフィスビルを所有しているオーナー
- 空室や修繕費の増加など、今後の収益に不安がある方
- 建替え・改修・継続保有のどれを選ぶか検討している方
- 本コラムのポイント
- 都心立地が今後も評価される理由
- 築古ビルで見直したい管理・設備・募集方法
- 継続保有・改修・建替えを判断するポイント
- 結論
都心立地の価値がなくなるわけではありません。ただし、都心にあるという理由だけで安定した入居を維持できるとは限りません。築古オフィスビルでは、自社ビルの立地をどのようなテナントが評価するのかを確認し、必要な設備更新や管理、募集方法の見直しを続けることが重要です。建替えを前提とせず、現在の稼働状況や修繕費、将来の収支を踏まえて、継続保有・改修・建替えを比較する必要があります。
都心立地という強みは今後も続くのか
都心のオフィスは、交通の便がよく、周辺に飲食店や金融機関なども多いため、通勤や営業がしやすい立地です。
そのため、築年数が経過したビルでも、立地条件がテナントの事業や働き方に合えば、選択肢に入る可能性があります。
| 都心立地の特徴 | テナント側のメリット |
|---|---|
| 交通利便性 | 通勤や各方面への移動に便利 |
| 取引先との距離 | 取引先への訪問や来客対応がスムーズ |
| 周辺施設 | 飲食店や金融機関などが充実 |
| エリアの認知度 | 来訪者に場所を伝えやすい |
一方、企業のオフィス選びでは立地だけでなく、賃料や設備、貸室の使いやすさ、共用部の状態なども比較されます。
特に築古ビルでは、立地が良くても、空調やトイレなどの設備が使いにくい、共用部の汚れが目立つ、管理が行き届いていないといった点が入居判断にも影響します。
「都心だから選ばれる」と考えるのではなく、立地以外に何を確認されているのかを見ることが必要です。
資産価値だけでなく収益を見る
都心部の不動産価格が上昇しても、ビルの賃料が同じように上がるとは限りません。賃料は周辺相場や建物の築年数、設備、募集状況などによって変わります。また、築年数が経過すると修繕や設備更新の費用も増えるため、不動産価格だけでなく、実際の収入と支出を見ることが重要です。
オーナーが把握しておきたい項目は次のとおりです。
- 現在の稼働率と空室期間
- 周辺物件と比較した募集賃料
- 修繕・設備更新にかかる費用
- 今後必要になる工事と実施時期
- 改修した場合に見込める賃料や稼働率
売却価格が高いから保有を続ける、築年数が古いから建替えると判断するのではなく、保有期間中の収入と支出を整理して判断することが大切です。
築古ビルの運営で見直したい5つのポイント
築古ビルを新築ビルと同じ設備水準に近づけようとすると、大きな費用がかかります。すべてを新しくするのではなく、自社ビルを検討するテナントが何を重視するのかを確認したうえで、改善する箇所を決めます。
- 立地:駅距離や周辺環境を募集時に伝えられているか
- 設備:空調・トイレ・通信環境などに不便がないか
- 共用部:エントランスや廊下の汚れ・古さが目立たないか
- 貸室:レイアウトや内装を変更しやすいか
- 募集方法:物件の特徴が募集資料や写真に反映されているか
たとえば、駅から近い小規模ビルであれば、大規模ビルと設備の充実度を比べるよりも、少人数の企業が使いやすい貸室や、営業拠点としての移動のしやすさを具体的に伝える方が募集につながる場合があります。
改修についても同様です。設備を一律に新しくするのではなく、内見時の反応や問い合わせ内容を確認し、優先順位を決めることが重要です。
建替えだけが正解ではない
築古ビルの今後を考えるとき、建替えは選択肢の一つです。しかし、建築費だけでなく、工事期間や建替え後の賃料、融資条件なども考慮する必要があります。
一方、現在の建物を継続して使用する場合も、設備更新や修繕費が発生します。
| 現在の状況 | 検討する方向性 |
|---|---|
| 稼働が安定している | 継続保有しながら必要な修繕を行う |
| 一部設備が古い | 優先順位を決めて部分改修する |
| 空室が長期化している | 賃料・募集方法・建物状態を見直す |
| 大規模修繕が続いている | 改修と建替えの収支を比較する |
重要なのは「古いから建替える」と決めないことです。
現在の収入、今後の修繕費、建替え費用、工事期間中の収入減少、建替え後に想定する賃料などを整理し、それぞれの収支を比較します。
また、空室が続いている場合は、改修そのものが必要なのかを確認することも欠かせません。募集条件や物件情報の伝え方に原因があれば、工事をしても状況が変わらない可能性があります。
築古ビルだからこそ選ばれる条件を整理する
企業がオフィスに求める条件は、設備だけではありません。立地や賃料、使いやすさなどを重視する企業もあります。
築古ビルでは、自社ビルのどこが評価されるのかを整理し、必要な設備や管理状態を見直すことが重要です。あわせて、物件の特徴を募集資料で分かりやすく伝えます。
都心という立地を活かしながら、建物の状態や募集状況を踏まえ、継続保有・部分改修・建替えを収支と市場の両面から比較することが、安定した賃貸経営につながります。
執筆者紹介
株式会社スペースライブラリ
プロパティマネジメントチーム
藤岡 涼
入社以来20年以上にわたり、東京23区のオフィスビルを中心にプロパティマネジメント・リーシング・建物管理を担当。
年間多数の交渉やトラブル対応経験を活かし、現場目線に立った迅速かつ的確な提案を通じて、オーナー様とテナント様双方の満足度向上に努めています。
2026年1月5日執筆