オフィスビル投資の収益分析|利回りだけで判断してはいけない理由【オフィスビル投資コラムシリーズ④】
オフィスビル投資では、利回りの高さだけで物件を判断してしまうケースが少なくありません。
しかし、実際の収益は空室率や修繕費、管理状態などさまざまな要素によって変わります。
本コラムでは、表面利回りと実質利回りの違い、NOIや収益還元法の基本的な考え方、購入前に確認したいポイントを解説します。
- どんな人向け?
- オフィスビル投資を検討している方
- 利回りだけで物件を判断してよいか迷っている方
- 物件の収益性を正しく見極めたい方
- 本コラムのポイント
- 利回りだけで判断してはいけない理由が分かる
- NOIや収益還元法の基本的な考え方が分かる
- 購入前に確認したいポイントが分かる
- 結論
オフィスビル投資では、利回りは重要な指標の一つですが、それだけで物件の価値や収益性を判断することはできません。
空室率や修繕費、管理状態、設備更新の状況なども含めて確認することでより実態に近い収益性を把握できます。
数字だけを見るのではなくその背景まで確認することが、長期的に安定した収益につながります。
利回りだけで判断してはいけない理由
オフィスビル投資では、物件資料の「利回り」に目が向きがちですが、この数字だけで物件の価値は判断できません。
※利回り…購入価格に対して年間どれくらいの収益が見込めるかを示す指標
例えば、同じ利回り8%の物件でも、修繕費や管理費、空室リスクによって実際の収益は大きく変わります。
築古物件は購入価格が低いため利回りが高く見えることがありますが、購入後すぐに設備更新が必要になる場合もあります。
また、高い利回りが設定された物件でも、空室が長期化していたり設備や管理体制に課題があったりするケースもあります。
重要なのは利回りの数字だけでなく、その収益を長期的に維持できるかを確認することです。
表面利回りと実質利回りの違い
利回りには、大きく分けて「表面利回り」と「実質利回り」があります。
この違いを理解しておかないと、購入後に「思っていたより利益が残らない」という結果になりかねません。
| 比較項目 | 表面利回り | 実質利回り |
|---|---|---|
| 計算方法 | 年間賃料収入÷購入価格 | 年間収入−経費÷購入価格 |
| 修繕費 | 含まない | 含める |
| 管理費 | 含まない | 含める |
| 固定資産税 | 含まない | 含める |
| 収益の実態 | 把握しにくい | 把握しやすい |
表面利回りは計算が簡単なため、不動産広告などで広く使われています。
一方、実際の運営では管理費や修繕費、固定資産税などの支出が必ず発生します。
例えば、表面利回りが8%でも年間の維持管理コストが大きければ、実際に手元へ残る収益は大きく減少します。
そのため、物件を比較する際は表面利回りだけで判断するのではなく、実際にどの程度の収益が残るのかまで確認することが重要です。
NOIを確認する理由
物件の収益性を判断する際によく使われる指標が、NOI(営業純利益)です。
NOIとは、賃料収入から管理費や維持管理費など、建物の運営に必要な経費を差し引いた収益を指します。
つまり、オフィスビルがどれだけ収益を生み出す力を持っているかを判断するための指標です。
例えば、次のような支出はNOIに影響します。
- 管理費
- 清掃費
- 設備点検費
- 共用部の電気代
- 修繕費(運営に必要なもの)
一方で、借入金の返済や減価償却費はNOIには含まれません。これは、建物そのものの収益力を比較するためです。
同じ賃料収入でも、管理費が適正で空室率が低い物件はNOIが高くなる一方、設備の老朽化や空室の長期化が進むとNOIは低くなります。
収益性を判断する際は、賃料収入だけでなく実際にどれだけ利益が残るかという視点が重要です。
収益還元法の考え方
オフィスビルは、住宅と比べて収益性が物件の価値に影響しやすい不動産です。
その考え方が「収益還元法」です。
収益還元法では、建物の価値を判断する際に次のようなポイントを確認します。
- 賃料収入
- 空室率
- 管理状態
- 修繕状況
例えば同じ年間賃料収入でも、管理状態が良く空室率が低い物件と設備の老朽化で空室が続く物件では、将来期待できる収益は異なります。
重要なのは「今の収益」だけでなく「今後も安定した収益を維持できるか」ということです。
また、大規模な投資ではDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)が用いられることもあります。
将来見込める収益を現在の価値に換算して評価する方法ですが、まずは収益還元法の考え方を理解しておけば十分です。
購入前に確認したいポイント
収益性を判断する際は、利回りだけでなく次のポイントも確認しましょう。
| 確認項目 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 空室率 | 空室が一時的か、長期化しているか |
| 修繕履歴 | 設備更新が計画的に行われているか |
| 管理費 | 収益に対して適正な金額か |
| テナント構成 | 退去リスクが偏っていないか |
| 賃料水準 | 周辺相場と比べて適正か |
特に確認したいのが、修繕履歴と空室の理由です。
例えば、空室が多い物件でも募集条件や共用部の改善によって解決できるケースがあります。
一方で、空調設備や給排水設備の更新時期が迫っている場合は、多額の修繕費が必要になる可能性があります。
購入後に想定外の支出が発生すると、当初計画していた収益を確保できなくなることもあります。
そのため、物件資料だけで判断するのではなく設備更新履歴や長期修繕計画まで確認することが大切です。
数字だけでは見えない収益性
収益性は数字だけで判断できるものではありません。
例えば、表面利回りが低くても空室率が低く設備管理が行き届いている物件は、長期的に安定した収益が期待できます。
一方で、利回りが高く見える物件でも空室が長期化していたり設備更新を控えていたりすると、将来的な収益は大きく変わります。
重要なのは「なぜその数字になっているのか」を確認することです。
利回りやNOIは物件を比較するための指標ですが、それだけで購入を判断するものではありません。
管理状態や設備更新の状況、空室の理由まで確認することでより実態に近い収益性を把握できます。
次回「第5回:オフィスビル投資の税金・法務|購入前に知っておきたい基礎知識」は10月15日公開予定です。
【オフィスビル投資コラムシリーズ一覧】
[ 第1回:オフィスビル投資とは?住宅投資との違いと成功の考え方 ]
[ 第2回:オフィスビル投資で押さえたい立地選びのポイント ]
[ 第3回:オフィスビル投資で失敗しない物件選び|規模と築年数の考え方 ]
[ 第4回:オフィスビル投資の収益分析|利回りだけで判断してはいけない理由 ]
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執筆者紹介
株式会社スペースライブラリ
代表取締役
羽部 浩志
1991年東京大学経済学部卒業 ビルディング不動産株式会社入社後、不動産仲介営業に携わる
1999年サブリース株式会社に転籍し、プロパティマネジメント業務に携わる
2022年サブリース株式会社代表取締役就任(現職) ライフワークはすぐれた空間作り
2026年10月1日執筆