「駅徒歩5分」という表記だけで、物件の価値を判断していないでしょうか。住宅と異なり、オフィスビルは企業の事業活動そのものに直結する「インフラ」です。どれほど内装や設備を整えても、立地がテナントニーズに合っていなければテナントから選ばれ続けることは難しくなります。

本コラムでは、立地を選ぶ際に確認したいポイントや、テナントに選ばれるエリアの考え方について解説します。

 

  • どんな人向け?

- 住宅投資からオフィスビル投資へのステップアップを検討している方

-「なんとなく」の感覚で立地を選び、空室リスクに不安を感じているオーナー

- 物件の利回りだけでなく、長期的な資産価値を最大化させたい経営志向の強い方

 

  • 本コラムのポイント

- 駅距離だけでは判断できない理由が分かる

- エリア選びで確認すべきポイントが分かる

- 災害リスクを確認する重要性が分かる

 

  • 結論

オフィスビル投資における立地は、単に駅に近い場所を選べばよいというものではありません。テナント企業が働きやすく、事業を続けやすい環境かどうかが重要です。物件を選ぶ際は、ターゲットとするテナント層や街の将来性、災害リスクなどを総合的に確認し、長期的な視点で判断することが大切です。

エリア選びで確認したいポイント

エリア選びでよくあるのが「なんとなく人気があるから」「知っている場所だから」という理由で判断してしまうことです。オフィスビルの立地価値は、その街にどのような企業が集まり、どのようなテナントニーズがあるかによって大きく変わります。

 

  • ターゲットとエリアの相性を確認する

ターゲットとするテナント層に対して、エリアの特性が合っているかを確認しましょう。例えば、IT企業が多いエリアはIT関連企業、士業やコンサルティング会社が集まるエリアは同業種から選ばれやすい傾向があります。ターゲットとするテナント層とエリアの特性が合っていなければ、空室リスクは高まります。

 

  • 再開発や都市計画を確認する

自治体が進めている再開発や交通インフラの整備計画も確認しましょう。こうした計画があるエリアは、将来的に企業の進出やオフィス需要が高まる可能性があります。一方で、大きな開発計画がないエリアでは現在の需要だけでなく、将来性も含めて慎重に判断することが大切です。

駅距離だけで立地を判断しない

「駅徒歩5分」という表記だけでは、立地の良し悪しは判断できません。重要なのは社員や来訪者が通いやすく、利用しやすい環境が整っているかです。

 

  • 路線の利便性

主要駅へのアクセスや乗り換え回数、所要時間も確認しましょう。社員が通勤しやすい立地は、テナントがオフィスを選ぶ際の重要な判断材料の一つです。

 

  • 歩きやすさと周辺環境

駅からビルまでの道中に坂道や歩道の狭さ、夜間に不安を感じる場所がないかも確認しましょう。また、飲食店や銀行などの周辺施設が充実していることも、テナントの利便性につながります。重要なのは駅からの距離だけでなく、日常的に利用しやすい環境が整っているかどうかです。

 

  • 時間帯別の動線確認

昼間だけでなく、夜間の人通りや街の雰囲気も確認しておきましょう。周辺環境に不安があるエリアは、テナントによっては立地選びの判断に影響することがあります。特に夜間の利用が多い企業では、周辺環境を重視する傾向があります。

再開発と街の将来性

再開発が進むエリアは、街の利便性や認知度の向上が期待できます。一方で、新たなオフィスが増えることで、テナント獲得競争が激しくなる場合もあります。再開発の有無だけでなく、その内容や将来的なオフィス需要まで確認することが大切です。

 

  • 新しいオフィスビルの増加を確認する

大規模オフィスビルが増えると、中小規模ビルは募集条件の見直しを迫られる場合があります。一方で、街全体の注目度が高まることで、周辺の既存ビルにも新たな需要が生まれることがあります。再開発の影響を考える際は、新しいオフィスが増えることだけでなく、それに見合う需要が見込めるかどうかを確認することも重要です。

 

  • オフィス以外の施設

近隣に大型商業施設ができる場合、オフィス需要の増加につながる可能性があります。一方で、交通渋滞などにより来訪しづらくなる可能性もあるため、メリットとデメリットの両面から判断することが重要です。

災害リスクとBCP対策

近年は、ハザードマップなどの災害リスクを確認したうえでオフィスを選ぶ企業も増えています。特に、BCP(事業継続計画)を重視する企業では、災害リスクも立地を判断する重要な要素の一つです。

 

  • リスクの実務的影響

単に浸水や土砂災害の危険性があるというだけでなく、災害リスクが高いエリアの物件は「火災保険料」が割高になるほか、テナント企業がBCP上の理由から入居を断念するケースも珍しくありません。

ここを軽視して安値で物件を買ったとしても、結果として質の高いテナントを呼び込めず、空室リスクと賃料回収リスクに長期的に苦しむことになります。

立地評価の比較軸

オフィスビルの立地を確認する際は、次のポイントを比較しながら判断しましょう。

評価項目確認したいポイント影響
エリアの企業集積同業他社の存在・エリアの特性テナント属性・賃料水準
アクセスのしやすさ徒歩動線・周辺利便性通勤・来訪の利便性
再開発街の将来性・再開発の状況中長期的な資産価値
災害リスクハザードマップ・BCPテナントの立地判断

立地選びのチェックリスト

ここまでの内容を踏まえ、立地選びで確認したいポイントをまとめます。

 

・そのエリアに、ターゲットとする企業が集まっているか

・駅からの距離だけでなく、通勤や来訪がしやすい立地か

・飲食店や銀行など、周辺施設が充実しているか

・ハザードマップなどを確認し、災害リスクに問題はないか

・再開発や交通インフラ整備など、街の将来性が期待できるか

 

立地を判断する際は、オーナーの視点だけでなく、テナント企業の立場で考えることが大切です。

「この場所は自社にとって働きやすく、事業を進めやすいか」という視点で見ることで、立地の価値を判断しやすくなります。立地は購入後に変えることができないからこそ、駅からの距離だけでなく、周辺環境や街の将来性まで確認しておきましょう。

立地を確認したあとは、建物そのものにも目を向ける必要があります。次回「オフィスビル投資で失敗しない物件選び|規模と築年数の考え方」では、建物の規模や築年数を見る際のポイントを解説します。

 

【オフィスビル投資コラムシリーズ一覧】

[ 第1回:オフィスビル投資とは?住宅投資との違いと成功の考え方 ]

[ 第2回:オフィスビル投資で押さえたい立地選びのポイント ]

[ 第3回:オフィスビル投資で失敗しない物件選び|規模と築年数の考え方 ]

 

【あわせて読みたい】

[ 徒歩5分より徒歩10分が選ばれることもある|オフィス立地の競争力を決める本当の要素 ]

[ 都心立地の価値は今後も続くのか?築古オフィスビルの生き残り戦略を考える ]

執筆者紹介
株式会社スペースライブラリ
代表取締役
羽部 浩志

1991年東京大学経済学部卒業 ビルディング不動産株式会社入社後、不動産仲介営業に携わる
1999年サブリース株式会社に転籍し、プロパティマネジメント業務に携わる
2022年サブリース株式会社代表取締役就任(現職) ライフワークはすぐれた空間作り

2026年9月3日執筆

羽部 浩志
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